2021年12月16日の楽待不動産投資新聞の表題の記事を紹介します。
「将来の大規模修繕に備え、資金を積み立てられる共済制度が来年スタートする。個人で一棟マンションなどを保有するオーナーでも掛け金を経費に計上できるようになる。10月に国土交通省の事業認可が下りた。管理組合がある分譲マンションだけでなく、個人が保有するマンションやアパートも、長期的な視点で建物を適切に管理できるように促す狙いがある。
ただ、共済の利用にあたっては、長期修繕計画の作成が必要となる。長期修繕計画を作成している個人オーナーは少ないのが実情で、制度の実用性を懸念する声も上がる。
外壁と屋根が対象
一棟マンションなどを保有するオーナーが個人事業主の場合、大規模修繕費用は、オーナーが預金などから支払うのが一般的だ。これまで大規模修繕費用を積み立てても預金とみなされ、経費に計上できなかった。一方、法人化している場合、中小企業が経営難に陥るのを防ぐための「経営セーフティ共済」制度を利用して掛け金を経費計上することができた。
国土交通省によると、外壁塗装や屋上防水などの大規模修繕費用の相場は、1戸当たり100万円前後とも言われる。建物の規模が大きくなるほど、修繕費用も高額になる。マンションなどを長期的に管理していくためには、計画的に準備する必要があり、個人オーナーが修繕積立をしやすくする仕組みが求められていた。
共済を運営するのは、「全国賃貸住宅修繕共済協同組合」。全国賃貸管理ビジネス協会、公益財団法人日本賃貸住宅管理協会、公益社団法人全国賃貸住宅経営者協会連合会の3団体が協力して立ち上げた。
新制度では、賃貸住宅の修繕積立金を共済掛け金にすることで、損金として認められる。掛け金上限などの詳細は、まだ公表していない。加入者は修繕資金を毎月積み立てることができ、節税効果も期待できる。対象となる修繕の範囲は「外壁」と「屋根」に限定する。このほかの給排水管や専有部の空調設備、水回りなどについても利用者のニーズに応じて、今後拡充を検討していく。
全国賃貸管理ビジネス協会によると、年明け以降、3団体に加盟する管理会社から「代理店」を募る。代理店が窓口となって賃貸物件のオーナーに共済を普及させていく。
同協会は「新制度の創設で、管理会社からオーナーに修繕計画の提案がしやすくなる。管理状態がよければ入居付けもしやすく、オーナーと管理会社の双方にメリットがある。中長期的に建物価値や賃貸価値を維持していくのに役立ててほしい」と話す。
制度の使いやすさは
共済の加入にあたっては、将来見込まれる修繕の時期や内容、費用を盛り込んだ「長期修繕計画」の作成が必要になる。長期修繕計画は、分譲マンションでは修繕積立金を集めるために管理組合などが作成しているケースが多いが、個人オーナーで作成しているケースはまれだ。代理店となる管理会社が共済加入時に計画作成をサポートする。
長期修繕計画では、将来の大規模修繕に必要な費用を見積もり、これをもとに掛け金を算定する。積立期間は10~50年で、月払いか年払いを選べる。積立金は、大規模修繕を実施した場合に支払われる。
加入条件は、建物の築年数が木造で築30年以内、RCで築40年以内とする。賃貸住宅であれば、戸建ても対象。個人事業主に限らず、法人化していても加入できる。
待望の共済制度だが、実際の使い勝手はどうなるのだろうか。
渡邊浩滋税理士は「個人オーナーにとって画期的な制度だ」と評価する一方、「共済に加入するには長期修繕計画を作成しなければならないなど、課題もあるのではないか」と指摘する。
渡邊税理士によると、管理組合がある分譲マンションと違い、個人オーナーが長期修繕計画を立てているケースは珍しい。作成には専門知識を持った管理会社やコンサルタントなどの力が必要だ。
長期修繕計画を作る上での注意点についても、次のように渡邊税理士はアドバイスする。
「長期修繕計画の作成を管理会社などに依頼する場合、将来の修繕にかかる工事費用を適正価格からかけ離れた水準で見積もるケースもある。長期修繕計画をもとに掛け金が決まるのであれば、計画が適正かどうかを審査する仕組みを整える必要があるだろう」
マンションの老朽化や修繕積立金不足が社会問題として取り上げられる機会が増えている。多くの不動産投資家にとって、大規模修繕の時期を迎える前に物件を売却し、また購入するなら大規模修繕を控えた物件は避けたいのが本音ではないだろうか。
大規模修繕がオーナーにとって大きな負担であることに変わりはないが、新たな共済制度の登場によって、少しでもその負担が減り、賃貸物件の管理の健全化が進むことを期待したい。」
分譲マンションと同様賃貸マンションでも、大規模修繕工事は必要です。記事にある積立制度が出来たことで、適切に維持管理された高品質な賃貸マンションの耐用年数が増えることを願います。
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