2022年2月10日の現代ビジネスの表題の記事を紹介します。
「まるでテーマパークのようなマンションギャラリー(モデルルーム)に魅入られて、十分に現地を確認しないままにマンションの購入契約をし、入居後に後悔する人が少なくない。モデルルームに足を運ぶ前に、何より現地をシッカリと確認しておくことが大切だ。
最新のモデルルームはまるでテーマパークだが…
最近の大規模マンションのマンションギャラリー(モデルルーム)は、さながらテーマパークのような、お客をその気にさせる仕掛けに満ちている。最初に、シアタールームに案内され、ゴージャスなソファーに腰掛けて、大画面で周辺環境や物件の素晴らしさを見せてくれる。なかには、360度画面で、椅子が振動したり、傾いて、天空からマンションの敷地に着陸するような雰囲気を味わえる演出があったりする。
モデルルームも、専有面積100㎡以上の住戸を1LDKなどとして、どの部屋も広々とした作りにしている物件が多い。ハイグレードマンションだと、ダイニングにはバカラのグラスが並び、クローゼットにはヴィトンの旅行鞄に、エルメスのバッグ――といった具合だ。
実際に購入する住まいとはかけ離れたこんな映像や住戸を見せられれば、誰だって宙を舞うような気分になって、商談室で後先考えずにサインしてしまうことになる。
昨年、大手デベロッパーから都内の大規模マンションを購入した40代の男性が語る。
「マンションギャラリーのシアターやモデルルームを見てスッカリ気に入って、現地に足を運ばないまま契約しました。建物が完成したときには、あの映像体験が自分たちのものになるのだと、ワクワクした気持ちで入居しましたが、実際の生活環境がまったく違うことに愕然としてしまいました。何とかいまは慣れましたが、当初は夢と現実のギャップの大きさに、家のなかが暗くなってしまったほどです」
気づいた時には後の祭りということだが、だからこそ、この体験者は、「最初にモデルルームを見に行くのではなく、現地に足を運んで、現実を確認。それでも欲しいということになってから、モデルルームを見学したほうがいいのではないか」とアドバイスする。
現地を見て免疫をつけておけば、マンションギャラリーの映像やモデルルームの仕掛けなどに惑わされる確率は低下する。新型コロナウイルス感染症でいえば、現地見学にはワクチンの効果があるのかもしれない。
事前にチェックしておきたい項目
では、現地では何をチェックするべきか。
自分たちが、新居に何を期待しているのか、それをシッカリと整理して、その希望を実現できる住まいかどうかを、自分の足を使って、目、耳、鼻の五感で確認することが大切だ。
新築マンションの多くは、いわゆる青田売りであり、販売開始時にはまだ建設工事が始まったばかりというケースが多い。
だったら、現地を見ても仕方ないじゃないか。そう思うかもしれないが、そんなことはない。周辺環境は1年や2年でそう変わるものではないので、事前に自分の目で確認しておくことには十分な意味がある。どんな点をチェックしておけばいいのか、具体的な項目は人にもよるが、実際に新築マンションを買った人たちの重視項目はグラフのようになっている。
トップの「価格」や3位の「広さ」、5位の「間取りプラン」などは、現地に足を運んでも体感できるものではないが、2位の「最寄り駅からの時間」、4位の「通勤アクセスの良いエリア」、6位の「生活環境」、7位の「周辺環境」などは、竣工前でも自分たちで体感できる。シアターで見る極限まで美化された映像ではなく、リアルの体験なので間違いがない。
「徒歩5分」という落とし穴
たとえば、「最寄り駅からの時間」について、映像や広告などで「徒歩5分」とうたっていても、実際にはその倍の10分以上かかってしまうことがある。
不動産広告では、80mを1分として表記することになっているのはご存知の方が多いかもしれないが、その80m=1分には、信号、坂道などは考慮されていないし、最寄り駅の起点も改札口ではなく、出口からになっている。地下鉄の駅だと、改札を出てから、地上の出口に達するまでに2分、3分とかかることが珍しくない。比較的新しい地下鉄だと、長大なエスカレーターがあって、それ以上かかることもある。
また、同じ5分でも坂道なのか、平坦な道なのかも、大きな違いだ。
さらに、くせ者なのが、こうした駅からの距離は、マンションのエントランスまでの時間ではなく、敷地に到達する地点まででOKになっている。大規模物件だと、敷地に入ってからエントランスまで1分、2分かかることがある。さらにエントランスからエレベーターホールに入って、共用廊下を通り、やっと住戸の玄関というときには、5分のはずが10分以上かかっていることが珍しくないというのは、こんな事情による。これは、実際に歩いてみないと分からない。
シアタールームの映像で、「徒歩5分の駅近物件」というのが強調されていて、それを鵜呑みにすると、現実とのギャップにガッカリすることになるわけだ。
実際に通勤をシミュレーションしてみる
重視項目の4位に挙がっている「通勤アクセスの良いエリア」も考えもの。シアターでは、「新宿駅まで35分の快適アクセス」などと強調されていても、それは日中空いていて所要時間が最も短い時間帯のもので、通勤時には40分、50分かかることもある。
途中で乗換えがある場合には、その乗換えにかかる時間は考慮されていない。タイミングが悪いと35分のはずが、1時間以上かかってしまうケースなどもある。
慎重な人は、希望物件の駅前のビジネスホテルに泊まって、通勤アクセスを体験する。駅まで徒歩で短時間ならば問題はないが、遠い場合には、バスは夜の何時まであるか、タクシーは拾えるのかを自分の目で確認する。子ども、特に女の子がいる家庭だと、駅周辺の治安や防犯面も気になるところだろう。
翌日は早めに起きて、マンションが建つ現場にも足を運び、駅までの所要時間を確認してみることも大切。雨の日などはぬかるみができないかなども気になるので、天気の違う日にチェックしておくことも重要だろう。その上で電車に乗って通勤してみる。所要時間だけではなく、混み具合なども体感できて、安心感が高まるはずだ。
家族全員で見て回ると安心
できれば、家族全員で現地に足を運んで、生活のさまざまな場面を想定してチェックしてみることをおすすめする。
広告や映像などで近くにスーパーがあることは分かっていても、実際の店舗を見てみないと品揃えや値段などは分からない。たしかにスーパーはあるが、ふだん自分たちが使っている商品が揃っていなくて、遠くのスーパーまで自転車で買い出し――なんてこともないとは言えない。
あるいは、高級スーパーしかなくて、生活コストが上がってしまった、逆に安いものしかなくて、自分たちには合わないといったこともあるだろう。子どもたちといっしょに校区になっている小学校、中学校、日常的に使えそうな公園などを見て回れば、家族全員が安心できる。
シアターの映像で、子どもたちが公園で楽しそうに遊んでいる風景が流れていたとしても、平日には、ほとんど人がいなかったり、逆に、サッカーなどのボール遊びをする大きな子どもたちがいて、小さな子どもたちが遊ぶには、少し危険を感じる場面があったりする。
「煽り」に乗せられないように
マンションなどのマイホームを購入するときには、どうしても気持ちが舞い上がってしまいがちだ。それをいったんおさめて、冷静になって物件や現地を確認してみることが大切だ。
人気の高い物件の場合、あまり時間をかけていると、売り切れてしまうのではないかという不安が生じるかもしれない。分譲会社や販売会社も「早く契約しないとなくなってしまう」と焦らせる――しかし、一生を左右する選択なのだから、惑わされてはいけない。そもそも、他に買いたい人が大勢いるなら、仮にあなたが買わなくても次の人に売ればいいのだから、必要以上に購入を促すことはしない。煽ってくるというのは、むしろ「ここで契約を取らないと次がない」と考えている可能性もあるくらいだ。
特に、新築マンションの多くは、実際に入居する住戸を見ることができない青田売りなので、実物を見ることができない分、せめて自分の足で最寄り駅からの所要時間や交通アクセスを確認し、家族全員で生活環境、周辺環境を見ておき、できるだけギャップが生じないようにしておきたい。回り道のように見えても、それが購入後の満足度を高める近道だ。」
このブログにもある通り、モデルルームだけでマンションの善し悪しを判断するのは危険です。モデルルームは見栄え重視で作られるため、間取りもオプションで部屋数が削られていたり、内装も住設もオプション工事ばかりで、標準仕様に無いような豪華な設備になっています。販売担当者には、オプション項目と標準仕様の違いを良く確認にしましょう。
また、モデルルームには、建物設計図(意匠図・構造図・設備図)が置かれており、閲覧を希望すれば見せて貰えます。できれば建築に詳しい人に同行してもらい、階高や、床スラブの厚さや壁の厚さや構造・二重床や二重天井の有無を確認して貰い、外観だけではわからない部分についてもアドバイスをしてもらえば効果的です。
実際の建築場所についても、記事のように、朝・昼・夜と1日3回、できれば平日と休日、晴れの日と雨の日に確認することが重要です。特にお子さんのいる家庭では、学校区や公園、近くのスーパー等は、是非確認しておきましょう。
マンションは一生に一回の買い物です。買ってから後悔のないように、充分検討して、納得してから購入することが重要です。
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