2021年11月29日の楽町不動産投資新聞の表題の記事を紹介します。
「建築資材の高騰が止まらない。緊急事態宣言が解除され、経済活動が本格的に再開する中、壁紙や床材、セメント、建築用ガラスなどさまざまな建材が相次いで値上げとなっている。最大で2~3割ほどの値上げとなったケースもあり、市場に与える影響は大きい。
高騰の背景には何があるのか。原因を探るとともに、不動産市場や不動産オーナーに与える影響を考える。
ウッドショックとコンテナ不足により木材が高騰
このところ、さまざまな建築資材で品不足や価格高騰が続いている。記憶に新しいのは、住宅用の輸入木材価格が高騰した、いわゆる「ウッドショック」。この影響で国産材価格も高止まりとなり、木造住宅の価格や工期に影響が生じた。
価格の上昇幅は過去に例を見ないほど大きなものだ。日本銀行が発表した「企業物価指数(輸入価格指数)」によると、木材・木製品・林産物全体の輸入価格は、2021年9月時点で前年末比69%上昇。木造建築の構造躯体などに広く使われている集成材は、前年末比で149%と大幅な上昇となっている。
出典:経済産業省ウェブサイト
なお、農林水産省が11月に公表したデータによると、10月の木材価格は9月と比べほぼ横ばい。価格高騰のスピードは緩やかになっているものの、高止まりしている。
ウッドショックの背景には、アメリカの住宅建設の急増がある。アメリカが莫大な財政出動と住宅ローンの低金利政策を実施したことで、住宅購入ブームが起きた。世界的に需給バランスが大きく崩れ、十分な量の輸入材が日本に入ってこなくなったのだ。また、コロナの影響で世界各地の製材所が休業したことや、輸送コンテナの不足などにより供給量そのものが減ったことも要因として挙げられる。
某大手ハウスメーカーの営業マンは「1棟当たりの値上がり額は(建物の規模にもよるが)今のところ20万~30万円程度に留まっている。ただ、今後どう推移していくかは分からない」と話す。
一般的に木造住宅1棟の工事費のうち、木材費が占めるコストは約10%強といわれる。木材高騰による建築費への影響は避けられないが、木材の高騰だけであればその値上げ額は小幅なものとなりそうだ。ただし、木材だけではなく他の建材の値上がりが続くとなれば、いずれは大幅な建築費の値上げも現実味を帯びてくるかもしれない。
「木材の供給遅れている」工務店76%
建設業界では、工期の遅れも問題となっている。先に述べたアメリカの住宅需要増加に加え、世界的なコンテナ不足による影響で、木材の供給不足が進行している。とくに中小工務店など、もともと建材の在庫数が少ない会社は深刻だ。国土交通省が中小工務店134社に対し、9月末時点の木材の供給遅延の状況について調査を実施したところ、「供給の遅延が生じている」と答えた工務店は全体の76%に上っている。さらに同調査によれば、供給遅延が原因で「現在の工事に遅れが生じている」と回答した工務店は36%に上った。
神奈川県内で建売事業を行っているA社の代表者は、「材木問屋が供給制限をしているため、新たな建売住宅の工事着工ができない。10月にプレカット材を注文したが、納品されるのは2月と聞かされている。工事着工が遅れれば、土地仕入れ資金の回収がさらに遅れてしまう」と話す。
建材価格の上昇は、コストアップ分を自社で負担したりすることで、何とか対応できる。しかし、木材そのものが供給されなければ着工すらできず、打つ手もなくなってしまう。
壁紙や床材などの建材も高騰
ウッドショックに追い打ちをかけるように、木材以外のさまざまな建材でも値上げが起こっている。値上がりの大きな要因は、原油、鉄、アルミ、銅などの「原料高」だ。
例えば、多くの建材の製造で必要となる原油の価格は、昨年末から値上がりを始め、今なお高止まりの状態だ。今年9月に日本に輸入された原油価格は、平均すると1キロリットル当たり約5万1000円で、前年同月比プラス65.5%という大幅な値上がりとなった。これは、第一次オイルショックが起きた1973年に匹敵するほどの高騰だ。
国内の建材メーカーの中には原料高の影響により、すでに具体的な数字を公表して自社商品の値上げに踏み切った企業も少なくない。
内装材最大手のサンゲツは、壁紙や床材などを9月から13~18%値上げした。同社は値上げの理由について、壁紙・床材・窓枠・網戸などさまざまな製品に使われる塩ビ樹脂・可塑剤やナイロン・ポリエステル繊維などの原料価格が値上がりしたことを挙げている。
化粧板や人工大理石カウンターなどの製造販売を行うアイカ工業も、11月1日から建装建材商品を現行価格比で5~25%値上げした。同社の値上げ理由も先述のサンゲツ同様、原料高である。
サンゲツのプレスリリース
物件価格、リフォーム費用に影響か
建材価格の高騰や供給不足が、不動産投資家に与える影響としては次の3つが考えられる。
・新築分譲アパートや新築分譲マンションなどの価格上昇 ・貸室のリフォーム費用の上昇 ・賃貸物件引き渡しの遅れ
建材価格の値上がりによって、新築物件の分譲価格が上昇したり、新たに収益物件を建築する際の工事費が値上がりしていく可能性がある。
ただ、これに関しては物件購入時期を遅らせたり、工事の発注時期を遅らせることで対応することができるだろう。建材価格の上昇が新型コロナ感染拡大の影響を受けていることは明らかであり、新型コロナが収束すれば、その影響は徐々に弱まっていくはずだ。
問題は、不動産投資家がすでに所有している収益物件についての対応である。所有物件から入居者が退去すると、次の賃貸募集のために修繕工事をしなくてはならない。その工事費が割高になっても空室期間短縮のためには、速やかな修繕工事は欠かせない。
工事業者としっかり打ち合わせをしていないと、リフォームに必要な建材・設備がなかなか納入されず、工事が完了しないこともありえる。
現在、収益物件を新築中で、賃貸募集をしている場合も同様の注意が必要となる。今後、収益物件の新たな賃貸募集については、契約始期を慎重に検討したほうがいいだろう。
現在、国内の新型コロナの感染者数は激減し、社会活動も元の水準に戻りつつある。しかし住宅業界においては、もうしばらく慎重に今後の推移を見守っていく必要がありそうだ。
一方、アメリカでは石油の供給量を増やし原油価格の上昇を抑える狙いで、石油備蓄を放出する政策を決定。これにより、建材価格が変動していくことも考えられるだろう。」
原油高と円安の影響で、石油製品や輸入品の価格が上がっています。
「ウッドショック」に続き「アイアンショック」という言葉も建設業界では出てきています。これは、原料の鉄鉱石の価格高騰による、H形鋼、厚鋼板といった鋼材が今年に入って軒並み値上がりしている状況を示し、リーマンショック前の高値水準に迫る状況を表した言葉です。
これを機会に、いままで20年以上続いたデフレが、インフレ局面に差し掛かっているのかもしれません。大規模修繕工事でも、建設費は上昇傾向です。今コンサルタントをしているマンションでも、前回(1回目)の大規模修繕工事は戸当たり80万円程度だった建設費が、今回の大規模修繕工事(2回目)では、戸たり120万程度になっています。かつては大規模修繕工事の相場は戸当たり100万円程度と言っていたのですが、今では戸たり120~130万程度と最初に説明しなければ、予算があわないケースも増えてきています。
建築費のアップは、修繕積立金のアップにも繋がります。マンション管理はいよいよ厳しい局面になってきそうです。
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