住宅ローンに落とし穴 引っ越して貸し出し、国税と銀行が注目の理由
- 快適マンションパートナーズ 石田
- 3 日前
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2025年1月22日の朝日新聞デジタルの表題の記事を紹介します。
「住宅ローンで買った自宅を転勤などで人に貸し出して、税金を追徴されたり、銀行から数倍の金利の支払いを求められたりするケースが相次いでいる。自分で住まなくなったのに税務署や銀行に届け出ず、優遇措置を受け続け、不適切とされた。春の引っ越しシーズンを前に注意が必要だ。
「引っ越したら住宅ローン控除が使えなくなると、なぜ言ってくれなかったんだ」。ある不動産会社には、客からこう苦情が寄せられたという。
同社から相談を受けたマルイシ税理士法人(東京)の藤井幹久税理士によると、同社の仲介で家を買った会社員の客が、その後に転勤となり、家族も一緒に引っ越した。すると、住宅ローン控除の要件を満たしていないと税務署から指摘を受けたという。
住宅ローン控除は、年末時点でのローン残高(最大上限5千万円)に0.7%を乗じた金額を、最長で13年間、所得税額や住民税額から差し引くことなどができる制度だ。転勤で家族を帯同して引っ越すなど、居住実態がなくなれば要件は満たさなくなる。藤井税理士によれば「税務署からこうした指摘を受けることは珍しくない」という。
税務署はなぜ目を光らせるのか。
国税、AIも本格活用
住宅ローン控除は税額そのものを減らす制度で、最大455万円と恩恵が大きい。国土交通省によると、年間の減税規模は約1兆円。だからこそ、不適切な控除は見逃せないというのが税務署の立場だと、藤井税理士は言う
税務調査では形式的な要件に合うかを確認するだけでよく、「国税庁はAIの本格活用に乗り出し、所得税の追徴は過去最多。税務署の対応スピードや精度も上がっているように見える」と話す。
不動産所得も申告を
引っ越し後に自宅を貸し出した時に得た収入を申告せず、税務署に指摘されるケースも多いという。本来、関連する経費を差し引いたうえで「不動産所得」として申告しなければならないが、これを怠るケースだ。
藤井税理士は「会社員でも、無申告で税務調査を受けることはあり得る。後から指摘されて加算税含めて追徴されないよう、税務リテラシーを個人が身につけることが必要だ」と指摘する。
住宅ローンで購入した自宅を無断で人に貸すと、金融機関との契約にも違反することになる。
りそな銀行は取材に、無断貸しが発覚した場合の対応について「契約上、優遇金利の解除や一括返済を求めることとなります」と説明する。
年間数百件で発覚
別の大手金融機関によると、無断貸しの発覚は年間数百件ある。複数の金融機関によると、借り主の自宅に残高証明書を送っても届かないことや、借り主との他の取引状況、現地調査などをきっかけに判明するという。
ある地方銀行は「抜け道を考えられてしまうことを回避したいため、詳細の回答は差し控える」とした。
大手金融機関の担当者によると、無断貸しが分かると、0・5%以下の変動金利の「優遇金利」を適用外にして2%以上にしたり、投資用ローンへの借り換えを求めたり、一括返済を求めたりする。応じないと、最終的に個人の信用情報を傷付け、クレジットカードが作れなくなることもあるという。
なぜ金融機関は厳しく対応するのか。
住宅ローン比較診断サービス「モゲチェック」を運営するMFS(東京)の塩沢崇取締役CMOは、「住宅ローンは返さないと自宅に住めなくなるかもしれないという意識があり、デフォルト(債務不履行)になるリスクが低い」と説明する。無断で人に貸す行為は、住宅ローンの低金利を可能にする前提そのものに関わるという。
まずは金融機関に相談を
auじぶん銀行は、無断貸しが仮に横行すると「正常なお客さまへ不利益をもたらす懸念も想定される」とし、将来的に金利を上げる可能性も示唆した。
ただ、auじぶん銀行含め多くの金融機関は、事前に相談し、会社員の転勤など一定期間後に戻る見通しがあれば、貸し出すことを認めている。別の大手金融機関の担当者は「海外転勤、親の介護、離婚など、住宅ローンを借りても住まなくなる事情は様々」とし、個別に対応すると話した。
MFSは投資用ローンへの借り換えも支援しており、月に数件の問い合わせがあるという。MFSの塩沢さんは「住宅ローンで借りてやむを得ず賃貸に出す時は、まずは金融機関に相談をして下さい」と話す。
住宅ローン控除関連の申告での間違い例
・床面積の要件は登記で判定するが、物件パンフレットの専有面積で判定して物件を購入し、控除を受けられなかった
・給与のほか副業や投資で年間合計所得が2千万円を超え、要件を満たさなくなったのに控除を受けていた
・物件の引き渡しを受けてから6カ月以内に入居しないと控除の要件を満たさないが、仕事や家族の都合で入居期限を過ぎた
・生活の本拠が別のところにあり、控除対象とした物件に居住実態がなかった
・1981年以前に建てられた中古物件で控除を受けるには、引き渡しまでに「耐震基準適合証明書」が必要だが、忘れていた
・子や孫に住宅購入資金を贈与した際に一定額について非課税になる特例制度を使う場合は、その金額をローン総額から差し引いて控除額を計算しなければならないのに、怠った」
住宅購入後に転勤等で住めなくなるのは、良くあるケースだと思います。昔は、そのような場合でも、税務署や銀行から指摘されるケースは少なかったですが、この記事によると、住宅控除が受けられなかったり、所得税を徴収されたり、借入金利が上がったり、さまざまな指摘を受けるケースが増えているようです。転勤の内示を受けた際には、今住んでいるマンションの税金や金利がどうなるかを事前に調べて、会社と調整する必要がありそうです。
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