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執筆者の写真快適マンションパートナーズ 石田

マンションの寿命は?

更新日:2021年6月30日



 「マンションはコンクリートでできているから長持ちするはず」「60年は住めるでしょう?」そう信じている人が、たくさんいます。実際、マンションの寿命は何年なのでしょうか?今回はそんなマンションの寿命のお話です。


①各種耐用年数で見た場合

 耐用年数には「法定耐用年数」・「経済的耐用年数」・「物理的耐用年数」の3つの指標があります。


法定耐用年数は47年

 法定耐用年数について改めて説明すると、税務上の減価償却を行うための減価償却費や、不動産的価値を算出するために国が定めたもの。アパートやマンションの種類、木造や鉄骨といった建物の構造によって一律に決められています。

 主流である鉄筋コンクリート造マンションは47年、木造は22年、軽量鉄骨造は27年、重量鉄骨は34年となっています。例えば、鉄筋コンクリート造のマンションを4700万円で購入した場合、減価償却として毎年100万円(4700万円÷47年)ずつ価値が減っていき、47年で価値が0円になる計算です。

 ちなみに、昔は法定耐用年数が60年と定められていた鉄筋コンクリート造マンションですが、1998年の税制改正によって47年に短縮されました。


経済的耐用年数  経済的残存耐用年数とは、居住者の利用状況や日々の補修・修繕などによる建物の傷み具合を総合的に判断し、「建物が経済的に価値を有するのは何年か」を評価したもの。一律で耐用年数が決まっている法定耐用年とは異なります。

 なお、今後見込まれる補修・修繕費などの費用も経済的耐用年数に影響します。建物が物理的に何年もつかではなく、経済的に何年価値があるのかで判断されるのが経済的耐用年数です。例えばエレベーターのない5階建てマンションとか、壁式構造でリフォームの出来ないマンションとかは、新しい生活スタイルに対応できず、まだ使えるけど、解体して立て直した方が良いという場合もあります。


物理的耐用年数は117年

 物理的耐用年数とは、建物が雨や台風などの物理的原因で劣化し、「構造上の問題が発生する」「材質の品質を維持できない」といった理由で住めなくなるまでの年数です。

 国土交通省がまとめた、「RC造(コンクリート)の寿命に係る既住の研究例」によれば、「鉄筋コンクリート造建物の物理的寿命を117年と推定」飯塚裕(1979)「建築の維持管理」鹿島出版会)、「鉄筋コンクリート部材の効用持続年数として、一般建物(住宅も含まれる)の耐用年数は120年、外装仕上により延命し耐用年数は150年」(大蔵省主税局(1951)「固定資産の耐用年数の算定方式」)となっており、十分に100年は超える耐久性があるものと考えられています。前述した「法定耐用年数」「経済的耐用年数」と比べると最も長い年数といえます。


②過去の建替え寿命から考えた場合

マンションの平均寿命は46年

 国土交通省が2002年に作成した報告書によると、マンションの平均寿命は46年、建て替え物件の着工時期は築後37年となっています。  「そんなに短いの!?」と感じた方も多いと思いますが、平均寿命とは、あくまでも取り壊されたマンションの平均寿命で、実際には、30~40年程度で取り壊されるマンションがある一方、それらと同時期に建てられても、ずっと長く人が住み続けられるマンションもあるのです。  立地が良く、建替えても採算の取れるマンションは早期に建替えられる傾向にあります。またその多くが、設備配管が取り換えられない造りになっていたことが原因とされています。排水菅などの設備配管類の寿命はコンクリートより短く、25~30年といわれています。古い時代に建てられたマンションには、この設備配管類をコンクリートに埋め込んでしまった例が多く見られます。設備配管類がコンクリートに埋まるかたちで建てられたマンションでは、配管類の取り換え時期が来ても交換することができず、結局は配管類の寿命とともに、建物の寿命を終えることになります。  耐用年数を上げるためには、設備配管類のコンクリート埋設がないことは最低限の条件であり、最近注目されているスケルトン・インフィル仕様であれば、さらに建物の寿命が長くなることが期待できます。


③宅性能表示制度で考えた場合  建物本体の「劣化のしにくさ」については、専門的な内容となり、一般の人がチェックするのは難しいので、簡単な見極め方法として、住宅性能表示制度を利用する方法があります。現在首都圏の新築分譲マンションの7割程度、大手デベロッパーの供給する分譲マンションではそのほとんどが同制度を利用しています。

 同制度を利用したマンションでは「劣化対策等級」という項目で、そのマンションがどれだけ長持ち仕様で造られているかを、一般の人にもわかりやすく表示しています。購入の際にはぜひ参考にしてください。


耐用年数75~90年を期待できるマンション

 住宅性能評価の「劣化対策等級」には等級1~3までがあり、等級ごとに、以下の耐用年数が期待できるマンションであることを示しています。 ■等級3……おおむね3世代(75~90年) ■等級2……おおむね2世代(50~60年) ■等級1……建築基準法に定められた対策がなされている(最低基準)

耐久性に影響を与える「水セメント比」

 鉄筋コンクリートの劣化とは、どのような現象をいうのでしょうか。鉄筋コンクリートの劣化は、コンクリートの中にある鉄筋が錆びることから始まります。それを防ぐために、鉄筋を守るようにコンクリートがまわりを覆っていますが、時間経過とともにコンクリートに収縮が起こります。収縮が大きいとヒビが入り、そこから雨水などが入り込んで内部の鉄筋を錆びさせます。  ヒビ割れの原因となるコンクリートの収縮には、コンクリートを構成するセメントと水の割合(=水セメント比)が関係しています。セメントに対して水の割合が大きいコンクリート、すなわち水セメント比が高いコンクリートを使用して建てたマンションは、時間経過とともに収縮が起こりやすく、ヒビが入る可能性も高くなります。

鉄筋を守るコンクリートの厚み「かぶり厚さ」

 鉄筋の周りを覆うコンクリートの厚さ(=かぶり厚さ)が厚ければ厚いほど、中の鉄筋はさびにくくなります。

 一般的に、かぶり厚さ3cmで寿命は65年。かぶり厚さ4cmで寿命は100年と言われています。


まとめ

 新築ではなく中古を買うのが当たり前な欧米では、築100年以上の住宅は、めずらしいことではありません。ニューヨークにある「エンバイア・ステート・ビル」は、1931年(築90年)に建てられていますが、いまなお摩天楼を見下ろす超高層ビルです。

 色々な指標を用いてマンションの寿命を説明しましたが、私の感覚としては適切な維持管理をしなくても60年、定期的な大規模修繕工事等、適切な維持管理を実施すれば100年は持つというのが今回の結論です。

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