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いま、マンションで起こる「新たな異変」…今後ますますヤバくなる、管理会社「低レベル人材」が露呈しはじめた

執筆者の写真: 快適マンションパートナーズ 石田快適マンションパートナーズ 石田


 2024年12月19日の現代ビジネスの表題の記事を紹介します。


管理会社の深刻な人材不足

 働き手の人手不足が社会問題となっている現在。総務省の調査によると、現在約7,457万人いる生産労働人口は2065年に4,500万人まで減少し、ますます混乱状態に陥る状況が目前にきています。

 この流れはどの業界も頭を抱える問題ですが、安全な暮らしを守る「衣食住」に大きく関わるマンション管理会社には、すでに数年前からその兆候が表れていました。

 それでも今までは、スキルや経験を生かせる同業他社への転職を希望する例が多く、業界内を回遊魚のようにぐるぐる廻るので、現在ほど深刻な状況ではありませんでした。

 ところが最近は、若いフロント社員の離職率が高く、そのほとんどが土日祝日が休み、残業もない会社への転職や、年収アップが期待できる建築・不動産などの他業種に転職する傾向が多くなっています。

 こうした背景には賃金格差や物価高騰、また個人のQOLを上げる生き方の多様化の影響するもの思われますが、マンション管理会社の人手不足は居住者に直結するだけに深刻な問題です。

管理会社のフロント社員の離職があいつぎ、正常な管理委託契約の履行ができないことから、人手不足が理由で管理会社から突然契約を打ち切られるマンションも多く、その相談が件数もどんどん増えてきました。

 マンションの管理業務は、清掃などの日常的な作業に加え建物や法律的な専門知識を要するものも含まれ非常に広範囲です。

 大手ではある程度作業が分担されていますが、中小の管理会社は漏水事故などの一時対応から業者の手配、保険の申請、理事会資料の作成、理事会の会場の手配、設営、出席、議事録素案の作成、居住者のクレームの対応など、昼ごはんを食べることもできない日も多くあるといいます。

 先日も「せっかくマンション管理組合の理事と信頼関係ができても、一年更新なのでまた一から関係を築かないといけない。毎年繰り返されるし、理事長と相性が悪いと一気にやる気をなくする」とフロント社員が漏らしていました。

 そしてこの人材不足の結果、住民にも直結する思わぬ弊害が起こっています。


フロント社員の大きな間違い

 先日も、都内にある築15年で500戸ほどのタワーマンションの理事に選任されたBさんからこんな相談がありました。

 ことの発端は、「来期の理事候補者にBさんが抽選で当たったので今度の総会に理事候補者として上程する」という管理会社の40代フロント社員からの電話連絡でした。

 Bさんのマンションは、役員のなり手不足を補うため「理事は組合員及び組合員と同居する一親等又は配偶者から選任する」という組合員の家族も役員になれるという管理規約を設けています。

妻と成人した息子と同居するBさんは電話口で、「誰が理事になるかを家族で話し合って決めるので少し時間が欲しい」と答えたところ、フロント社員は「Bさんが総会で理事として承認されれば、息子さんや奥さんが理事会に理事として出席できるのでご心配には及びません。どこのマンションでもご主人の代わりに奥さんや家族が理事として出席しているので問題ありません」といいます。

じつはこの「家族がBさんの代理で理事会に出席できる」という説明は大きな間違いです。マンション理事は、家族であれば”代理でいい”というわけにはいきません。それどころか大きなトラブルや有罪に発展する場合もあります。

 管理規約の解釈では、総会議案書にBさんの氏名で上程して総会で承認された場合、たとえ家族であっても、本人以外の妻や息子が理事として理事会に出席する資格はありません。その理由を例えるならば、国会議員が選挙で当選しても、家族には議員資格がないので国会に出席できないのと同じです。

 それを無視して、承認も受けていない妻や息子が理事として理事会に出席すれば、資格のないものが業務を行っているとみなされて、最悪の場合は「無効だ!」と声を荒げる住民のクレームやトラブルにつながります。そういった例もこれまで多く見てきました。

 仮にBさんの代理で奥さんが理事会の議長を行い、議事録の署名押印欄にBさんの氏名で代筆、押印すれば、有印私文書偽造罪になる可能性があります。

 また、理事長は裁判の時に原告になることが管理規約に規定されています。その場合にも、総会で選任された人物ではない者が理事長(議長)を務めていたとなれば、原告適格者ではないことになります。

 Bさんはそのこともフロント社員に伝えましたが、「どこのマンションもやっているので気にしないください」の一点張り。これ以上自分の意見を主張すると、理事会や管理会社にクレーマー扱いされそうなので、理事会の意見に従うことを伝えて電話を切りました。


満足な教育をしにくい状況

 数日後、理事会の確認事項として「家族の誰でも理事になれるように総会の議案書には、役員候補者の苗字だけ記載して名前は入れないことにしました」という回答がBさんの留守電に残されていました。

 役員候補者の苗字だけ記載した場合、理事候補者が特定されないで議案が無効になる可能性があり、これにはBさんもあきれるばかりでした。

 じつはこのフロント社員は、以前も管理費の払出し請求書に銀行届出印を押印する際にも、「何の費用で何の科目なのか」と確認しても「よくわかりません」と応える始末。

 マンション共用部分を理事会で自主点検した際には「このマンションの地下の機械式駐車場や給水設備、排水設備、エレベータの機械室を初めて見て勉強になりました」という感想を述べ、担当物件の共用部設備の状態さえもまったく把握していませんでした。

 このフロント社員の職務怠慢を上司に指摘すると、「彼のモチベーションの水準が弊社のフロント社員の水準だと思わないでください」とは言うものの、教育の必要性は理解しているが、厳しくすれば辞めてしまうかもしれないし、辞めてしまうと後任がなかなか見つからず管理組合に迷惑かかる、と言いたげな様子でBさんに愚痴をこぼしていたそうです。

 Bさんのマンションの管理会社は、常にランキング10位以内に入る大手デベロッパーのグループ会社でそのフロント社員は、管理業務主任者とマンション管理士の資格も持っているといいます。

彼は素直でよい性格なので、仕事ができるフロント社員がなるように期待を込めて接していきたいとBさんは言っていました。

 人手不足が深刻化するなか、辞められたら困るので言いたいことも言えず、顧客のサービスより従業員ファーストを優先する企業では、満足な教育ができていない状態で現場に送り出すので仕事ができないフロント社員の不満に関する相談が増えています。

 そのため定年をむかえるフロント社員に無理に頼み込んで定年延長して若手フロントの教育係として再雇用する管理会社も多くなっています。

 マンション生活を快適に過ごすには、管理会社のサービスに100%お任せではなく、あなたもそのサービスの一翼を担う気持ちでマンションに住み続けることが大切です。」


 管理会社の社員(フロントマン)は、何か問題があれば、入居者からクレームを言われ、中には夜間休日を問わず呼び出したり、長時間罵声を浴びせられたり、モンスタークレーマーのせいで退職に陥るケースもあるなど、不人気な職種です。大手の管理会社では、夜間・休日は会社の携帯電話にでないことや、カスタマーハラスメント対策を徹底している会社もありますが、過剰なカスハラ対策から、入居者から逆に対応が悪いとクレームがあるケースもあります。

 この記事のような、ご主人が区分所有者で、奥さんが代わりに理事会に出席するケースは、従来からよくあるケースですが、厳密に言うと、この記事に書かれているように違法です。標準管理規約では、区分所有者であるご主人が事故や入院等で、理事会に出られない時に限り、理事会への奥さんの出席が認められています。このフロントマンはベテランのようなので、従来の慣習で、このような回答をしたのだと思いますが、厳密な回答を求める入居者には、やはり正確な回答をすべきだったと思います。

 実際、管理会社の人手不足は深刻です。マンション入居者自身も、管理会社社員を自分の思う通りに出来るという、誤った意識を改革する必要があると思います。「お客様は神様」は、過去の誤ったフレーズになっています。


 
 
 

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