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「この空き家、あなたは相続人です」突然届いた手紙 詐欺?…事実は

執筆者の写真: 快適マンションパートナーズ 石田快適マンションパートナーズ 石田


 2024年12月23日の朝日新聞デジタルの表題の記事を紹介します。


「これって、新手の詐欺か何かか?

 中部地方で暮らす男性(49)は、突然届いた封筒を開け、そう思ったという。

 近畿地方の自治体名が書かれた封筒。自宅に届いたのは、2024年5月の下旬ごろだ。

 首長名の手紙が入っていた。

 「空家(あきや)等の適正管理について(依頼)」

 そう題された手紙の宛名となっている自分の住所と名前に、間違いはない。

 「あなたが相続人となられている空家について、近隣住民から通報がありました」

 屋根に穴が開き、草木が繁茂しており、このままだと近隣に影響しかねない。修繕か、撤去、解体が必要な状態だという。所在地が書いてあった。写真も複数、添えられていた。確かに傷みが激しそうだ。しかし、何の心当たりもない。まったく知らない家だ。知らない人の名前も書かれていた。

 「あなたの母の父の姉にあたる」

 その人の姓は、母の実家の姓とも異なっていたが、男性は「相続人」なのだという。言われてみれば、近畿地方のその府県に、遠い親族がいると聞いたことがあった。しかし、自分が空き家の相続人だとは。

 手紙には、ご丁寧にも「突然の連絡で驚かれたかと思いますが」として、「戸籍を調べて血縁関係を確認」したと書いてあった。

 どうやら、何かの間違いではないらしい。

 そして、この状態が放置された場合、自治体が空き家を「管理不全空家」と認定する可能性があり、そうなると、固定資産税が増える可能性もある、と記してあった。その知らない家の固定資産税を、男性がいま払っているわけではないが、放置するとまずいことになりそうなことは伝わった。

大都市をのぞけば不動産の価値が下がって「負動産」とも言われ、相続登記がされなかった「所有者不明」土地も問題に。そして迎えた前例のない多死社会は、前例なき「大相続時代」でもあります。相続の現場を訪ねます。


「相続」か「放棄」か 寄せ集めた戸籍謄本

 男性は、4男1女の5人きょうだいの末っ子だ。手紙に「あなたの母の」と書かれた母親は、すでに2017年に亡くなっている。父親は、さらにその10年以上前に亡くなった。

 「なんか変なの来たけど」「見た?」

 きょうだいでつくっているLINEグループに投稿してみた。前後して、全員に同じ手紙が届いていた。きょうだいを代表して、男性が、封筒に書かれた連絡先に電話をかけた。

 自治体の担当者による説明は、さらに意外なものだった。

 その空き家は、3年ほど前から、近隣住民から相談が寄せられるようになり、自治体側は登記上の所有者となっている人の親族に連絡をとって対応を促した。ただ、すでに高齢なこともあってあまり進展がなく、今回はさらに広範囲に文書を送った。その数は、50人近くだという。登記上の所有者からたどると、現在、戸籍上ではそれだけの人が、法的には相続人という地位にあることになる。

 しかし、そんな家は行ったこともないし、そもそもまったく知らない。

 そう話すと、担当者は「きょうだいで話し合って、相続するか放棄するか、決めてください」と言った。放棄をする場合の期限は、相続を認識してから3カ月以内だ、という助言もあった。それを過ぎると、相続したことになる。もちろん、相続どころではない。

 男性は、知り合いの税理士から紹介を受けた司法書士に、相続放棄について相談。住んでいる自治体の役場に出向き、戸籍謄本などを請求した。相続放棄をしたい事情を説明し、「母の父の姉」という空き家の所有者にさかのぼれるまで、自身と母親の記載された戸籍、母親とその父親が記載されたもの、さらに、空き家の所有者が出てくるもう1世代前の戸籍……。江戸時代、嘉永年間(1848~55年)に生まれたという人物も登場した。

 本人が請求すれば、父母や祖父母など直系尊属の戸籍謄本や除籍謄本を取得できる。以前は、それぞれの本籍地となっている自治体に請求する必要があったが、2024年3月からは最寄りの役場ですべてまとめて取得できるようになった。ただ、今回10枚以上だった書類を受け取るまで2時間半ぐらい待ち、手数料も計7千円ほどかかったと記憶している。

 こうして集めた戸籍類や、登記簿などによると、その空き家は木造平屋建ての住宅と、同じく平屋建ての物置からなり、床面積はあわせて100平方メートルほど。登記上の所有者となっている「母の父の姉」は、明治時代の生まれで、1962年に亡くなっていた。そのときに、現実には誰かが受け継いで住んだのかもしれないが、少なくとも登記上は相続は反映されていない。彼女には夫がいたが先に亡くなり、子どもはいない。その時点で、嘉永年間生まれの両親もすでにない。彼女の弟にあたる、男性からみた「母の父」もすでに亡くなっていたため、相続権はその子どもである男性の母親に移動。しかし母親も亡くなり、男性を含む5人きょうだいに移動してきた、ということのようだ。

 50人近いという相続人は、このどこかで枝分かれした親族ということになるが、男性が集めた戸籍だけでは全容はわからない。

 相続放棄の手続きは、難しくはなかった。司法書士とともにこうした書類を集め、相続放棄の「申述書」を作成。空き家がある地域の家庭裁判所に送付した。しばらくして「受理通知書」が届いた。

 「これで、相続放棄の手続きは完了です」。司法書士からそう聞いて、ほっとしたという。男性には子どもが2人いる。「放置しておくと、今度は相続権が子どもにまでいってしまう。そうならなくて、よかったです」と男性は話し、こう付け加えた。「本当は、この人の近しい親族の人たちがちゃんと手続きをしてくれていたら、私はこんなことをしなくて済んだのですよね」


増加する空き家、全国に900万戸

 男性が「結局、グーグルアースで見ただけで、見には行きませんでした」と話す空き家は、古くから交通の要衝として栄え、水路が流れる昔ながらの町並みにある。

 通りから砂利道を奥へ。家の前の道は、いまの建築基準法で求められる幅4メートルには、とても足りない。外壁の板材が一部はがれかけ、軒も垂れ下がる。近隣の住民によると、その隣の家も空き家になっているはずだという。

 男性に届いた手紙に書かれた「管理不全空家」という言葉は、2023年に施行された「改正空き家対策特別措置法」で新たに設けられたものだ。周囲に大きな悪影響を及ぼす「特定空家」が生じるのを防ぐため、そうなりかねない空き家について、自治体が「管理不全」と認定し、所有者に指導・勧告できるようになった。勧告を受けると、住宅の敷地となっている土地の固定資産税が6分の1などと軽減される「住宅用地特例」が解除される。この自治体は人口十数万人。担当者によると、自治体として把握している空き家は千数百件あり、近隣から通報があったものなどについて、順次、適切な管理を依頼する文書を送っている。空き家対策特別措置法に基づいて戸籍を調べると、登記情報が更新されないうちに相続人が多岐にわたってしまっている事例も少なくないという。

 担当者は嘆く。

 「放置すればするほど、空き家の状況は悪化するし、相続人が広がっていってどんどんややこしくなる。これでは、いつまでたっても問題が解決しない」

 総務省が2024年4月に公表した、2023年の住宅・土地統計調査(速報値)によると、全国の空き家は900万戸にのぼり、過去最多に。総住宅数に占める割合も、13.8%で最高を更新した。900万戸のうち、賃貸用や売却用、別荘などをのぞき、長期間の不在や取り壊し予定などがある空き家は385万戸にのぼる。国土交通省が2020年に公表した空き家所有者の実態調査によると、相続で空き家を取得した人が54.6%を占め、相続で取得した人の17.8%が相続登記をしていなかった。」


 空き家が増えてくるに伴い、この記事ような事例も増えてくると思います。行政ももっと早く対策していれば、何代も後の人に通知は行かなかったのではないでしょうか?早急な行政の対応が求められます。

 
 
 

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