建物の屋根で外壁より突き出している部分を軒(のき)といい、窓や出入口の上にある、日よけや雨よけ用の小型の屋根の事を庇(ひさし)と言います。
最近の都心部の住宅は軒が短い、またはない住宅が建てられていますが、かつての日本住宅では、軒はほとんどありました。
むしろ軒の深い住宅が日本住宅の特徴でした。
日本の住宅の軒や庇の出がより深く建てられた理由は、夏は真上からの太陽の光をさえぎり暑さを抑え、冬は太陽の高度が低くなるため、太陽の光が室内の奥まで取り込むという、まさに自然と一体となった家づくりがなされたものです。
最近は洋風なデザインやコストがかかるということで、軒や庇のない家も増えてきていますが、簡単で小さな屋根でも、室内の環境をより良いものにしたり、建物を厳しい外部環境から守る働きしてくれます。
軒・庇の役割
①窓などの開口部の上に小さな屋根が取り付けられることから、小雨の日でも窓を開けられる開放感をもたらしてくれます。また、壁面を伝って落ちてくる雨も窓上で防ぐので、雨漏り等の漏水事故も少なくなります。
②夏場の強い日差しで家具や床が色褪せするのを防ぐ事にも役立ちます。窓の上部に設置される小さな屋根は、日差しが家の中に直接入り込んでくることを防ぐことから、室内の家具を色あせから守ってくれます。一部分に強い直射日光が当たり続けて、不自然な日焼けの場所ができてしまうことはありません。
③外壁が汚れるのを防ぐ
外壁が雨で濡れてしまう状態が長く続いていくと、次第に汚れが目立ってきて、最終的には雨が壁を流れた形で黒ずんだ汚れになってきます。 外壁もそうですが、扉やサッシ等を汚れや劣化から守ってくれることもメリットとして挙げられます。
軒や庇は、日本人の知恵として、高温多湿の日本の気候風土にあった建物にするために、古くから活用されてきました。マンションのバルコニーも機能的には庇の一種と言えます。
最近の住宅は洋風化のデザインが多く、軒や庇がない家が増えてきていますが、建物を長持ちさせるためには、軒や庇は重要です。家を建てる時には、今一度考えたい設備です。
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