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執筆者の写真快適マンションパートナーズ 石田

火災保険料の値上げが止まらない!保険料を抑える「3つのポイント」とは?

更新日:8月23日



 2023年7月22日のダイアモンドオンラインの表題の記事を紹介します。


食品や日用品、光熱費、物流費、医療費など、さまざまな分野で値上げの動きが止まらない。マンションの管理費も、今後値上げが避けられない費用の一つだ。共用部分にかかる水道光熱費や備品・材料費の上昇に加え、管理組合が損害保険会社に支払うマンション総合保険の保険料が上がるためである。2022年10月から火災保険料の値上げが実施され、さらに2024年度にもさらなる値上げが待っている。しかしマンションの保険料は、管理組合の取り組み次第では値上げの影響を最小限に抑えることができる。管理組合はどのように火災保険と付き合っていくべきか、詳しく解説する。(株式会社シーアイピー代表取締役・一級建築士 須藤桂一)


過去最大の引き上げ幅となった2022年10月の保険料率改定

 2022年10月、損害保険各社は管理組合向けの火災保険、いわゆる「マンション総合保険」の保険料を改定した(一部は2023年1月、5月に改定)。近年、火災保険料の改定は頻繁に行われており、この10年程度を見ても、今回が4度目の改定となる。

 マンション総合保険の保険料率は、損害保険各社でつくる損害保険料率算出機構が算出する「参考純率」を目安として、保険会社ごとに決めている。

 火災保険に限ったことではないが、保険料は保険料率を基に計算される。保険料率は、事故が発生した際、保険会社が保険金の支払いに充当する部分の「純保険料率」と、保険会社が保険事業を行うために必要な経費や手数料などに充当する部分の「付加保険料率」から成り立っている。

 その純保険料率の部分について、損害保険各社が参考にする数値が、前述の参考純率である。つまり、参考純率が引き上げられれば、損害保険各社はそれを基準に火災保険の値上げを検討することになるわけだ。

保険料率の構成。「純保険料率」を決めるための参考数値が、損害保険料率算出機構が算出する「参考純率」である 出典:損害保険料率算出機構「火災保険・地震保険の概況」


 損害保険料率算出機構は、火災保険金の支払いが増えてきている状況を踏まえて、2023年6月21日に、火災保険の参考純率を全国平均で13%引き上げると発表した。参考純率は2014年以降で5回改定されているが、2019年までの引き上げ幅は3.5~5.5%の範囲だった。それに比べると前回(10.9%)と今回(13%)は引き上げ幅が大きく、2020年以前では最大の上げ幅だった2005年の8.7%を上回り、過去最大となっている。

2014年以降の、火災保険の参考純率の引き上げ推移(編集部作成) 


 実際には、地域や築年数、事故件数、保険プランなどによって値下げとなるケースもあるため一律ではないが、全体としては値上げ傾向で、保険料の負担が増える改定内容となっている。改定後の保険料が改定前の2~3割増、中には4割近く上がったケースもある。


なぜ火災保険料は値上げを続けているのか?理由は「災害の増加」「古いマンションの増加」

 なぜ火災保険料は頻繁に値上げされるのか。その最大の理由は、保険金の支払いが増加したことで、損害保険会社の収支が悪化し、火災保険の仕組み自体が成り立たなくなる可能性があるためだ。保険金の支払いが増加した背景には、主に「自然災害リスクの増加」と「高経年マンションの増加」が挙げられる。

 近年、大型台風やゲリラ豪雨などによる自然災害が多発しており、保険金の支払いが金額・件数ともに増えているのが現状だ。特に2018年度と2019年度は、大規模な台風や豪雨の影響によって保険金の支払額が激増している。

保険金が支払われた金額の推移。オレンジ色が自然災害によるもので、2018年度、2019年度の多さが目立つ 出典:損害保険料率算出機構「火災保険・地震保険の概況」 


 地球温暖化や気候変動が叫ばれる中、自然災害の発生リスクは今後も高いとみられることから、2023年以降も保険金の支払い請求は増加傾向で推移するだろう。損害保険会社の収支の悪化を防ぐために、参考純率のさらなる見直しと、それに伴う保険料の値上げは避けられない動きといえる。

 なお、2022年10月の改定で10年の長期契約が廃止されたことも、「自然災害リスクの増加」が影響している。火災保険の保険料率は、契約期間中の災害の発生割合を推計して決められているが、近年の相次ぐ自然災害により、長期的なリスク予想が困難になってきていることが廃止の理由だ。


築年数が10年以上のマンションが保有契約件数の4分の3近くに

 一方、「高経年マンションの増加」はなぜ保険料の値上げにつながるのだろうか。

 損害保険料率算出機構の発表する資料によれば、保有契約件数のうち、築年数が経過している住宅(築10年以上)が占める割合は、2016年度時点で68.2%だったものが、2020年度には73.5%に増加している。築年数が古い住宅の割合は、今後ますます増加する見込みだ。

 建物が古くなるにつれて、電気設備や給排水設備などの老朽化が進み、火災や水漏れといった事故が発生しやすくなる。そのために、古い住宅が増えると事故の発生リスクも増加するものとして、そのリスク傾向が参考純率に反映されているのである。

 特に、マンション総合保険で保険金の支払い請求が多いのが水漏れ事故だ。火災保険では「水濡れ」といい、給排水設備の事故や、他の住戸からの漏水被害などが該当する。中でも、給排水設備に関する水漏れの場合、給排水管の老朽化が原因であることが少なくない。

水漏れ損害による支払い状況 出典:損害保険料率算出機構「火災保険・地震保険の概況」 


 実はこの水漏れ事故に対する火災保険の使い方が、保険料を押し上げる一因にもなっているのだ。


自然災害や火災だけでなく、水漏れや破損なども補償するマンション総合保険

 マンション総合保険では、以下が基本的な補償内容となる(今回の記事では、地震保険についての説明は除く)。

・火災、落雷、破裂

・爆発

・風災

・雹災

・雪災

・水災

・水濡れ

・盗難

・破損、汚損など(建物外部からの物体の落下・飛来・衝突/騒じょう・集団行動などに伴う暴力行為などを含む)

 これらに加えて、次のような特約を付けて、いざというときに備えている管理組合が多い。

・施設賠償責任補償(建物管理賠償責任補償)

・個人賠償責任保険(包括契約用)

・水濡れ原因調査費用

 このうち、水漏れ事故は基本補償の「水濡れ」に該当すれば補償の対象になるが、水漏れの原因が誰にあるか、またどの部分にあるか(専有部分か共有部分か)で、対象となる保険が異なってくる。

 マンションの水漏れ事故で多いのが、給排水管などからの水漏れだ。たとえば上階から水漏れがあり、下の階に損害を与えてしまった場合、水漏れを起こした配管が上階の専有部分に当たるのか、それとも共有部分に当たるのかで、責任の所在が変わる。

 まずは水漏れの場所や原因を突き止める必要があるが、給排水管および給湯管は建物の内部や床下を通っているため、どの部分の何が原因で水漏れを起こしているのか、一見しただけでは分かりにくい。そこで、専門業者に頼んで原因を調査することになるが、ここで利用するのが、管理組合が加入しているマンション総合保険の水漏れ原因調査費用特約だ。


管理組合の保険を多用しすぎると火災保険料が高くなる?

 調査の結果、水漏れの原因となった配管が共有部分であれば、管理組合の責任として、マンション総合保険の水漏れ補償(共用部分に生じた損害に対して)や、施設賠償責任補償(下の階の住戸に生じた損害に対して)で対応する。実は、マンションの水漏れ事故で圧倒的に多いのは給湯管からの水漏れで、ほとんどのマンションにおいて給湯管は専有部分となっており、管理組合の保険を利用する対象にはならないケースが多い。

 水漏れの原因となった配管が専有部分だった場合は、上階の住戸の所有者(加害者)が責任を負うことになるが、たとえば加害者が個人で賠償責任保険に入っていない場合、被害に遭った下の階の住人(被害者)は補償を受けられず、泣き寝入りになってしまう。

 また、加害者が個人賠償責任保険に入っていたとしても、加害者と被害者の個人間で賠償の交渉をする場合、交渉が難航する可能性が高く、トラブルに発展してしまうこともある。管理組合としても、そうしたトラブルは望ましくないこともあり、そのままマンション総合保険の個人賠償責任保険(包括契約用)を使うケースが多い。

「どの保険を使っても、被害が回復すればいいじゃないか」と思うかもしれないが、損害保険会社や契約内容によって違いはあるものの、事故の発生数(事故率)によって、保険契約の割引率が変わってくる場合が少なくない。そのために、何でもマンション総合保険で解決してしまうと、それが次の契約更新の際に、割引率の引き下げという形で反映されてしまい、保険料の値上げにつながってしまうのだ。

 水漏れ事故に際しては、管理組合としては安易な保険利用をせず、責任の所在を明確にし、加害者が加入している個人賠償責任保険や、被害者が加入している火災保険(水濡れ特約など)も使いこなすようにするなど、保険料の値上げに影響しないように努めたい。


2024年度に再び火災保険料が上がる!保険料の負担を抑えるポイントとは?

 ここからは、保険料の値上げに備えて、少しでも保険料を抑えるために、管理組合として何ができるかを見ていきたい。保険料の負担を軽減するポイントとしては、次のことが考えられる。


(1)契約内容を見直す

 現在の保険の契約内容が、マンションの現況に合っているか確認することも大切だ。たとえば、建物が損害を受け、建て直しや修理、再取得する際に必要な「再調達価格額」の設定が過剰になっていないかなど、保険金額や補償内容を精査し、不要な内容を外していくといいだろう。また、今回は言及していないが、地震保険の内容を見直すことも保険料の削減に効果がある。

 また、保険金はその設定額を限度に、免責金額(自己負担額)を差し引いた金額が支払われるため、免責金額(自己負担額)を上げることで、保険料を安くすることもできる。保険金は、受取額が3万円であっても、あるいは1000万円であっても、保険請求としては同じ1件として扱われる。保険の請求回数が多いと事故の多いマンションと判断され、次の更新時の保険料に影響してしまうので、少額であれば保険を使わずに済ませたほうが得策と考えて、無理のない範囲で免責金額(自己負担額)を設定するといいだろう。

 そのほか、特約を外して保険料を削減する方法もある。ただし、たとえば個人賠償責任保険(包括契約用)を外す場合には、区分所有者の火災保険や個人賠償責任保険への加入状況も無視できず、不用意に外してしまうと問題が生じる可能性もあるので、特約の扱いに関しては慎重に判断したいところだ。


(2)保険期間を最長の5年にする

 マンションの中には、たとえば長期契約をしたくても、予算の都合上、一括でまとまった金額を支払えないという理由から、保険を1年契約にしているところもあるだろう。1年契約のメリットは、毎年保険の契約更新の案内が来るので、それを保険見直しの良い機会と捉えられる点だが、更新手続きを毎年行う必要があり、長期契約よりも1年当たりの保険料が割高になるというデメリットもあるので、マンションの財政状況と相談しつつ、できれば最長の5年契約を選ぶようにしたい。


(3)相見積もりを取る

 たいていのマンションでは、管理会社を通して保険契約を行っているが、管理会社が保険代理店の機能を果たしていることが少なくない。管理会社に新しい保険の見積もりを頼んでも、管理会社の都合に合わせた内容の見積もりが出てきてしまうので、必ず現在の保険代理店(管理会社)以外の保険代理店にも依頼して、複数の見積もりを取るようにすることが大切だ。

 マンション総合保険のプランや補償内容は保険会社ごとに違いがある。中にはマンションのメンテナンス状況などを診断し、その診断結果に応じて火災保険料を決定するというユニークな保険もあるので、保険料の高低だけでなく、自分のマンションに最適なプランや補償を見つけるためにも、相見積もりを行うことは効果的といえる。

 また、保険料は参考純率の引き上げを受けてから、一定の期間を置いてから改定されるので、新しく保険を契約する場合には、保険料の値上げが実施される前に締結するようにしたい。たとえば保険料の改定が10月1日なら、それ以前に契約を締結するのだ。そうした保険料の値上げに関する情報を収集しつつ、保険代理店に見積もりを取る際には、契約の締結日についても相談するといいだろう。

 保険料の値上げ自体は歓迎できることではないが、自分たちの大切な財産を守るために、本当に必要な保険内容になっているか、良い見直しの機会と捉え、来る保険料の値上がりに備えて、保険内容の精査と保険料の削減に取り組んでいただきたい。」


 この記事の中の対策3で記載されている「マンションのメンテナンス状況などを診断し、その診断結果に応じて火災保険料を決定するというユニークな保険」とは、日新火災のマンションドクターという保険です。この保険は日本マンション管理士会連合会の「マンション管理適正化診断サービス」を受けることで、管理状況が良好であれば、掛け金が安くなるという保険です。診断自体は無料で実施できるので、興味がある管理組合は一度診断を受ければどうでしょうか?

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